【映画の感想】ネタバレあり注意。ウリスと幸の結末に恐怖 – 劇場版selector destructed WIXOSS

 先日から公開が始まったアニメ映画・劇場版『selector destructed WIXOSS』。カードゲーム『ウィクロス』を題材にしたファンタジー作品だが、そのシリアスな雰囲気は販促アニメの枠を超えてしまっているようにも感じる。
 2014年に本作のテレビシリーズが放送された。今回の映画ではテレビシリーズを未確認の方でも楽しめるよう 総集編部分も多く設けている。本作は総集編と新規ストーリーを織り交ぜた新解釈版 つまりパラレルワールドの物語として作られた。

 ということで、早速作品を見に行ってきたので ネタバレありで感想記事をお送りします。
 まずは入場者特典。キャラデザ・坂井久太さん書き下ろしのミニ色紙やウィクロスカードがランダムで付いてくる。最高だよ。……当然ながらこの笑顔からは作品の悲しさは感じ取れない。
 同時に写っているのは主題歌「Love your enemies」のアーティスト盤CDです。主題歌については記事の下の方をご覧ください。
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マナー

 本編上映前にはマナームービーとして、『ウィクロス』のキャラクター達の登場するアニメーションが放映された。こちらは完全にギャグ。

総集編 – “infected”

 本編はおなじみの“撮影所”から始まり、新キャラである『』や ウリスの幼少時代の『留未』が登場する。続けて『“たちばな”るう子』の複雑な家庭環境がクローズアップされた後、『』のモノローグによってテレビシリーズの総集部分へとつながる。
 初っ端酷評で申し訳ないが 総集編部分、特に“infected”(テレビシリーズ1期)部分は退屈だった。非常に悪く言えばPVを有料で見せられている感じ。繭やウリスのセレクター“解説”では作品に没頭する事が難しく感じるかもしれない。特にテレビシリーズを既に視聴しているユーザーの立場では。
 とは言うもののテレビシリーズ全24話を約40分に凝縮することが困難であることは想像に難くない。作品を細部まで分析すれば、要点を端的にまとめられているクオリティの高い再編作業が行われた事が明らかになるかもしれない。

総集編 – “spread”

 ところがその退屈は途中で一転するだろう。“spread”(テレビシリーズ2期)部分から断続的に挿入さ始める、不穏感が増した新規カットには不安感を大いに煽られた。「自分はテレビシリーズを見ているから安心」という観客感覚の視聴者を無理やり物語に対峙させる構図だ。すごい怖い
 そう。何と言っても今作の最大の注目すべき要素は、テレビシリーズでは見られたギャグをを徹底的に排除した点だろう。本作には(良い意味で)笑いが無く 各キャラの尖った部分を一層先鋭化させている。唯一ギャグと言えるのが幸と病室を同じくするおばさんくらいで、あの「アキラッキー」にすら戦慄を覚えるような内容だ。晶といえば忍者ばりの身体能力を備えていることでも人気だが、残念ながら映画では拝見できなかった。

はっきり表現されたラストのタマ

 テレビシリーズでは思わせぶりだった 最終回で貯水槽上に座る『タマ』。果たしてタマは人間になれたのか、るう子と再会できたのか。劇場版ではその疑問を抱く必要は無い。
 本編終了間近の、るう子がタマを貯水槽の上に発見したシーン。こちらはテレビシリーズを含めて評価しても、最もゾクゾク、最も感動的な場面だった。テレビシリーズを視聴した方なら誰でも興奮を覚えるはず。ここで泣く方も居るんだろうなあ。

百合としてはパーフェクト(?)な『留未』『幸』エンド

 個人的に最も衝撃的で恐怖を感じたのはラスト数分。『留未』(ウリス)の幼馴染である『幸』は、幼少時に留未と離れ離れとなってしまう。この時すでに異様な執着心が芽生えていたのかもしれない。中学生になった幸は留未同様セレクターバトルを行い夢限少女となり、留未と永久に共にいることを願う。
 本作本編中にるう子に敗北したウリス(留未)は、やはり謎の虚無空間に閉じ込められる。そこにやって来たのが、幸であった……。

 個人的に今回の映画で一番恐ろしく感じた展開が幸と留未の百合エンドだ。彼女らはこの後、虚無空間にて永久に(全裸で)抱き合って過ごす日常が待っているのだろう。最後の黒の幕が剥がれる直前の留未の表情は正に恐怖一色に見えた。
 一方で考え方を変えれば最高の百合エンドと捉えることも容易に出来る。その上、上記のような結末を取る作品が極めて珍しい訳でもない。だから正直言って、なぜここまで恐怖を感じたのか正確に分析出来ていない。テレビシリーズを超える直接的なエロティシズムが影響したのか、結末まで想像できなかった幸のギャップなのか、あのウリスが見せた恐怖の表情の為か、あるいはウリスを見放したるう子の為か、もしかしたら筆者が病み上がりだった為かもしれない。
 もう一度書いておくが 留未と幸のエンドは本当に尋常じゃない、と個人的には感じた。

 ところで、観覧後に冒頭部分を振り返るといくつかの伏線が張られていたことに気付く。横断歩道を渡る(across)ことをWIXOSS(wish+across)を行うことと見てから幸の発言の「辛くなっちゃうの嫌」を考えれば、セレクターとなりバトルをすることで不幸になる暗喩である気する。また、留未が自らから離れていくことを「棒を抜く」だと見ると、“留未から離れて辛くなりたくない”という暗示でもあるような気もする。考えすぎでしょうかね。
 さらに、幼少のるう子と幸の会話で「タマ」を連呼するシーンがあった。「じゃああなた『タマ』ね」と言ったのが幸である事や、“るう子”が“幸”と共に「タマ」を連呼した事など、象徴的なシーンに思えるがその伏線は作品内で回収されていただろうか。

ばとるー

 繭に辿り着きウリスを成敗するまでの流れは非常にスムーズで、「えっこれで終わり?」と感じてしまった。キャラの掘り下げはあまり行われず、テレビシリーズでの主要キャラでも登場シーンが少なくなってしまった点はやや残念だ。
 作品の捉え方は多くあり人それぞれ。もし興味を持たれたのなら是非見に行って頂きたい。しかし脚本の岡田さんの脳内はこのような物語で埋め尽くされているのかと思うと……。

音響、音楽、挿入歌、主題歌

 音響は最高でした。5.1chサラウンドに加えて迫力のある大音量。のみならずテレビシリーズから変わらない音響効果によって心臓が締め付けられる。音響や音楽が絵以上にプッシュされているシーンもあり 気合の入り方がハンパない。
 挿入歌はテレビシリーズから引き続きCyuaさん。こちらの楽曲も最高でした。Cyuaさんは作中BGMでコーラスも担当したようだ。残念ながら挿入歌をiPodで聴けるのはおそらくBD発売以降になる。
 そして主題歌(エンドロールで流れる)は分島花音さん。劇場で聴かれることを前提として壮大なオーケストラを曲全般に導入したようだ。ちなみにその壮大なエンドロールのクレジットのフォントはゴシック体で、テレビシリーズの全スタッフやウィクロスカードを担当したイラストレーターまで表記されている。

続編は?

 続編についての明確な情報はもちろん出ていない。ところが今作で回収されなかった伏線や、終盤の緑子(緑)と花代の会話から続編の匂いがしないでも無いが……。

Blu-ray Disc / DVD の発売は?

 未発表ですが当然予定されているでしょう。細部まで確認したいですし もちろん買います。
 もしテレビシリーズをご覧になりたい、手元に置いておきたいという方には廉価版のDVD BOXがオススメだ。

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